★世界最初の女性ゴルファーは誰?
「世界最初の女性ゴルファーは誰でしょう?」と聞かれると、一般的には“悲劇の女王”として有名なスコットランドのメアリー女王であると言われています。1565年にシートン城近くのリンクスでゴルフをしたという公式な記録があるからです。
しかし、もしかしたらメアリー女王より先にゴルフをプレーした女性がいたかもしれません。ただ、メアリー女王以外に女性がプレーしたという史料が19世紀になるまで存在していないというだけなのです。
メアリー女王がプレーしたのは、正確にはゴルフとペルメルだったと言われています。
ペルメルとは木製の球を木で打つフランスの球戯です。
当時のゴルフは、今日のように長い距離を飛ばした後、球を転がしてホールに入れるというものではありませんでした。
メアリー女王のような高貴な女性は、飾りのついた長いドレスを着用していたので、どちらかといえば「球ころがし」という程度のものでした。
★レディスゴルフクラブ
19世紀の文献には、スコットランドのマッセルバラに近い海岸地帯の漁村に住む漁師の女房や娘たちは男同等の仕事をし、休日にはゴルフやフットボールにも興じていたという記述が残っています。
やがて、漁師の女性たちはグループを作り、それがレディスゴルフクラブに発展していきました。
1872年には、セントアンドリュースの地方新聞にレディスゴルフクラブの話題が記事になりました。この記事によると、女性たちのゴルフはパッティンググリーンでのプレーに限定されてはいたものの、数多くの競技会を開催していたそうです。
おなじ頃、イングランドの上流階級の女性たちの間にもゴルフが広まり、パッティンググリーンで熱心にプレーしていました。ウィンブルドンなどの地域で、上流階級を中心としたレディスゴルフクラブが組織されはじめ、次々にレディスクラブが生まれました。
注目すべきは、これら初期のレディスクラブのほとんどは完全に男性のクラブから分離した女性主体のクラブ組織で、こんにちのような男性中心のクラブの中のひとつのセクションというような存在ではありませんでした。
★初の全英女子ゴルフ当時のレディスゴルフファッション
1893年、最初の全英女子選手権競技が開催されました。最長ホールは337ヤード、18ホールで4264ヤードだったと記録に残っています。9ホールの女性専用のコースがリザムアンドセントアンズにあったのです。残念ながら、このコースは現存していません。19世紀も終わりになって、ようやく女性もこんにち同様のゴルフ競技が行われるようになりました。
女性が本格的にゴルフを始めたビクトリア女王時代(1837~1901年)は、イギリス史において産業革命による経済の発展が成熟に達したイギリス帝国の絶頂期。この時代は、淑女が人前でひざや二の腕をさらすなどとんでもないことで、ブラウスはフリルのついたハイネックと膨らんだパフスリープでした。パフスリーブとは直訳すると、ふくらんだ袖という意味で、日本では「ちょうちん袖」といわれます。
当時のレディスゴルファーの衣装は、スカートは長くゆったりとし、歩くのにも邪魔なロングドレスを着用し、ドレスの襟はノリが聞いてピンとしていて、クラブ制定のタイとユニフォームのジャケットを着ていました。
靴には鋲のようなものがついていて、頭には各クラブのリボンがついたカンカン帽をかぶっていました。
当時のレディスゴルファーたちは下着をたくさん着用しており、コルセットで胴をきつく締めつけていました。球を転がすのが主体だったとはいえ、よくこの衣装でゴルフをやったものです。
しかも女性が肩より上にクラブを振りあげることは、“はしたない”と言われていた時代。これでは体の回転で球を遠くに飛ばすことはとても困難だったことでしょう。
初めての全英女子で優勝したのは、当時18歳の貴族出のレディ・マーガレット・スコット(1874-1938)。
女性もうっとりするほどの美女だったそうです。そんな美女がモダンなゴルフというスポーツで優勝したことにより、英国では女性の間にゴルフ熱がさらに広まっていきました。
レディ・マーガレット・スコットは英国社交界の大スターとなり、英国中の話題の人となりました。翌年の第2回、そして続く第3回でも優勝し、レディ・スコットの人気はますます高くなりました。
しかし、ゴルフにおける女性のファッションは、はるかに有用性の点で男性から遅れていました。男性ゴルファーはスーツでしたが、プレーには問題がありません。これとは対照的に、女性はドレスアップすることが期待され、非現実的なロングドレスでプレーしなくてはなりませんでした。
★女性の社会進出と機能的ファッション
女性服飾史によると、スカートの裾が短くなったのは第1次世界大戦(1914-1918)後だそうです。女性の社会的地位が叫ばれ、機能性を優先したからです。
レディスゴルファーのファッションも、その影響で格段に軽快になりましたが、それでもスカートの丈は脛(すね)辺りまであり、しかもタイトなため、スタンスも取りづらかったようです。
そして、1933年のイングリッシュ・レディース選手権で衝撃的な事件が起きたのです。
出場選手のひとりが真っ黒なスラックスでスタートホールのティーグラウンドに現れたのです。上半身も真っ黒。まるで男性のようないでたちでした。
トーナメント会場は騒然。ズボンを履いてプレーしたという女性は前例がないということで、大会役員たちは急遽会議を行い、その選手に警告を与えることにしたほどです。
ところが、彼女は1回戦で敗退して、そのまま帰宅してしまいましたので、警告には至らなかったそうです。
それほど当時としては斬新だったのでしょう。しかし、機能性を重視しはじめた時代背景もあり、これ以降、少しずつスラックスを着用する選手が増えていきました。
第二次大戦後には、男性と同様のゴルフシャツにキュロットやスラックスでプレーをするようになり、その後、現在における基本スタイルの襟付きシャツ、スカート、パンツというアイテムが登場し、定着していきました。
2000年以降、幾多のブランドが進出し、カジュアルでスタイリッシュな「ゴルフファッション」を確立して、さらに市場を拡大しています。
パターゲームからゴルフゲームへ、一切露出のないロングドレスから肌の露出の激しい現代のゴルフウェアへと約150年の間に、女性のゴルフは大きく移り変わりました。
現代はというとゴルフのファッショントレンドは女性が中心になって華やかになっています。また数多くのゴルフ場で女性の飛距離に合わせたティーグラウンドの設置が進むなどレディスゴルファーを対象にゴルフは動き始めています。
これから、ますますレディスゴルファーの増加とともに、次は何が変化していくのかと思うととても楽しみです。
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「世界最初の女性ゴルファーは誰でしょう?」と聞かれると、一般的には“悲劇の女王”として有名なスコットランドのメアリー女王であると言われています。1565年にシートン城近くのリンクスでゴルフをしたという公式な記録があるからです。
しかし、もしかしたらメアリー女王より先にゴルフをプレーした女性がいたかもしれません。ただ、メアリー女王以外に女性がプレーしたという史料が19世紀になるまで存在していないというだけなのです。
メアリー女王がプレーしたのは、正確にはゴルフとペルメルだったと言われています。
ペルメルとは木製の球を木で打つフランスの球戯です。
当時のゴルフは、今日のように長い距離を飛ばした後、球を転がしてホールに入れるというものではありませんでした。
メアリー女王のような高貴な女性は、飾りのついた長いドレスを着用していたので、どちらかといえば「球ころがし」という程度のものでした。
★レディスゴルフクラブ
19世紀の文献には、スコットランドのマッセルバラに近い海岸地帯の漁村に住む漁師の女房や娘たちは男同等の仕事をし、休日にはゴルフやフットボールにも興じていたという記述が残っています。
やがて、漁師の女性たちはグループを作り、それがレディスゴルフクラブに発展していきました。
1872年には、セントアンドリュースの地方新聞にレディスゴルフクラブの話題が記事になりました。この記事によると、女性たちのゴルフはパッティンググリーンでのプレーに限定されてはいたものの、数多くの競技会を開催していたそうです。
おなじ頃、イングランドの上流階級の女性たちの間にもゴルフが広まり、パッティンググリーンで熱心にプレーしていました。ウィンブルドンなどの地域で、上流階級を中心としたレディスゴルフクラブが組織されはじめ、次々にレディスクラブが生まれました。
注目すべきは、これら初期のレディスクラブのほとんどは完全に男性のクラブから分離した女性主体のクラブ組織で、こんにちのような男性中心のクラブの中のひとつのセクションというような存在ではありませんでした。
★初の全英女子ゴルフ当時のレディスゴルフファッション
1893年、最初の全英女子選手権競技が開催されました。最長ホールは337ヤード、18ホールで4264ヤードだったと記録に残っています。9ホールの女性専用のコースがリザムアンドセントアンズにあったのです。残念ながら、このコースは現存していません。19世紀も終わりになって、ようやく女性もこんにち同様のゴルフ競技が行われるようになりました。
女性が本格的にゴルフを始めたビクトリア女王時代(1837~1901年)は、イギリス史において産業革命による経済の発展が成熟に達したイギリス帝国の絶頂期。この時代は、淑女が人前でひざや二の腕をさらすなどとんでもないことで、ブラウスはフリルのついたハイネックと膨らんだパフスリープでした。パフスリーブとは直訳すると、ふくらんだ袖という意味で、日本では「ちょうちん袖」といわれます。
当時のレディスゴルファーの衣装は、スカートは長くゆったりとし、歩くのにも邪魔なロングドレスを着用し、ドレスの襟はノリが聞いてピンとしていて、クラブ制定のタイとユニフォームのジャケットを着ていました。
靴には鋲のようなものがついていて、頭には各クラブのリボンがついたカンカン帽をかぶっていました。
当時のレディスゴルファーたちは下着をたくさん着用しており、コルセットで胴をきつく締めつけていました。球を転がすのが主体だったとはいえ、よくこの衣装でゴルフをやったものです。
しかも女性が肩より上にクラブを振りあげることは、“はしたない”と言われていた時代。これでは体の回転で球を遠くに飛ばすことはとても困難だったことでしょう。
初めての全英女子で優勝したのは、当時18歳の貴族出のレディ・マーガレット・スコット(1874-1938)。
女性もうっとりするほどの美女だったそうです。そんな美女がモダンなゴルフというスポーツで優勝したことにより、英国では女性の間にゴルフ熱がさらに広まっていきました。
レディ・マーガレット・スコットは英国社交界の大スターとなり、英国中の話題の人となりました。翌年の第2回、そして続く第3回でも優勝し、レディ・スコットの人気はますます高くなりました。
しかし、ゴルフにおける女性のファッションは、はるかに有用性の点で男性から遅れていました。男性ゴルファーはスーツでしたが、プレーには問題がありません。これとは対照的に、女性はドレスアップすることが期待され、非現実的なロングドレスでプレーしなくてはなりませんでした。
★女性の社会進出と機能的ファッション
女性服飾史によると、スカートの裾が短くなったのは第1次世界大戦(1914-1918)後だそうです。女性の社会的地位が叫ばれ、機能性を優先したからです。
レディスゴルファーのファッションも、その影響で格段に軽快になりましたが、それでもスカートの丈は脛(すね)辺りまであり、しかもタイトなため、スタンスも取りづらかったようです。
そして、1933年のイングリッシュ・レディース選手権で衝撃的な事件が起きたのです。
出場選手のひとりが真っ黒なスラックスでスタートホールのティーグラウンドに現れたのです。上半身も真っ黒。まるで男性のようないでたちでした。
トーナメント会場は騒然。ズボンを履いてプレーしたという女性は前例がないということで、大会役員たちは急遽会議を行い、その選手に警告を与えることにしたほどです。
ところが、彼女は1回戦で敗退して、そのまま帰宅してしまいましたので、警告には至らなかったそうです。
それほど当時としては斬新だったのでしょう。しかし、機能性を重視しはじめた時代背景もあり、これ以降、少しずつスラックスを着用する選手が増えていきました。
第二次大戦後には、男性と同様のゴルフシャツにキュロットやスラックスでプレーをするようになり、その後、現在における基本スタイルの襟付きシャツ、スカート、パンツというアイテムが登場し、定着していきました。
2000年以降、幾多のブランドが進出し、カジュアルでスタイリッシュな「ゴルフファッション」を確立して、さらに市場を拡大しています。
パターゲームからゴルフゲームへ、一切露出のないロングドレスから肌の露出の激しい現代のゴルフウェアへと約150年の間に、女性のゴルフは大きく移り変わりました。
現代はというとゴルフのファッショントレンドは女性が中心になって華やかになっています。また数多くのゴルフ場で女性の飛距離に合わせたティーグラウンドの設置が進むなどレディスゴルファーを対象にゴルフは動き始めています。
これから、ますますレディスゴルファーの増加とともに、次は何が変化していくのかと思うととても楽しみです。
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